概要
モビリティウィークの実施条件の三つ目めが、「カーフリーデーを実施する」です。
9/16-22のモビリティウィーク期間中に、1日、クルマのない都市空間を創出します。イベントは、最終日の9/22の実施が望ましいですが、各都市の事情に合わせて設定してください。
実施内容
モビリティウィーク最終日の9/22に行われる、メインイベントです。
一日、街の中心部において、自動車交通のないエリアを創出し、市民が、車のない都市空間を体験します。
エリア内での移動は、歩行、自転車、公共交通となります。
そのため、公共交通の増便(運賃の減額、または、無料)、シャトル便で連絡される駐車場の確保、相乗りの促進、貸自転車の設置などが行われます。
この体験により、市民は、「クルマに頼らなくても、都市の中を問題なく移動できる」ことを理解できます。さらには、地球環境や都市文化、都市生活の質の問題等を考えるきっかけにもなり、まさに、持続可能なまちを考える日となっています。
留意点
- カーフリーデーは、9/22の実施が望ましいですが、各都市の事情に応じて、モビリティウィーク期間中の他の日でも実施可能です。
- 日本では車の交通規制を伴う催しでなくても、啓発活動だけでも参加することができます。ただし、その場合、EMW本部への登録としては、カーフリーデーの実施都市にはカウントされません。
- 自動車の流入規制については、自家用車を制限することを意味し、福祉車両、タクシー、住民のための自家用車、救急車など緊急車両等は、通行できます。
カーフリーデー実施のステップ
- エリアの設定
カーフリーエリアは、都市全体でも、特定の範囲でも、有効です。複数のエリアで行う場合には、歩行者が快適にエリア間を移動できるよう、歩行者動線に配慮してください。また、設定の際には、エリアのタイプ(住宅地、オフィスエリア、商業エリア)、アクセシビリティ、周辺の駐車場状況などをよく検討してください。当日は、自動車交通の混乱をできるだけ避けるよう、事前に、マイカー利用者への的確な情報提供を行いましょう。
- 時間の設定
カーフリーデーを平日に設定できると、自動車がもたらすCo2排出量や騒音、燃料消費を最大限に削減できます。同時に、日々の移動で、他にもバスや自転車など選択肢があると、市民に気づいてもらうことができます。時間は、通勤時間の前後1時間を含めた一日8時間程度が理想です。これが難しい場合には、土日や祭日に行うことから始めるのもよいです。また、モビリティウィーク期間だけでなく、通年行う場合には、月に1回、どこかの週末で、また、毎週日曜日に設定してみてください。
- 情報発信と共有
カーフリーデーを実施する際は、当日、住民やマイカー通勤者を混乱させないために、自治体は、さまざまなメディアを活用して、市民へ発信したり、市民との細やかなやりとりが必要となります。事前の細やかなコミュニケーションは、カーフリーデーの苦情や混乱を減らします。そして、その際には、ぜひ、持続可能なモビリティをPRしてください。
- 地域の団体との協働
カーフリーデーに参画してくれる団体・市民は、多ければ多いほど、充実します。たとえば、自転車の団体、学校、企業、自治会、青年会議所、公共交通機関など。特に、カーフリーエリア内にある商店主さんたちには、自動車が入れないことについての理解や協力を得るための特別な配慮が必要です。
- 規制の実施
当日の朝、カーフリーエリアは、バリケードなどで、自動車の通行を禁止します。カーフリーエリアの入口は、誘導員を配置する必要があります。警察や交通局など関連機関のサポートが必要となります。
- クルマに代わる移動手段の提供
公共交通機関は、現状よりも、市民が便利に利用できるようにサービスを改善する必要があります。体の不自由な人がより利用しやすいようにしたり、特別運賃や無料チケットを発行したり、バスまたは電車のチケットとで併用できる駐車券を発行したり、映画館、プールなどの娯楽施設における割引チケットを提供するなどのサービスが必要です。
また、自転車や、マイクロモビリティ(超小型モビリティ)も車に代わる優れた移動手段です。地元のサイクリング団体と協働して、マイクロモビリティのサービスを提供する事業者と協力し、シェアサイクルやスクーターの安全な使用を促進します。カーゴバイクの活用を忘れないでください。
- 緊急車両等の対応の検討
カーフリーエリア内では、病院など医療関係の送迎車、障害者・高齢者サービス車、救急車は、当日の通行を許可します。また、緊急を要する修理作業車についても同様です。
それ以外の自動車通行については、最小限になるよう、個別に検討してください。
- 駐車場の検討
カーフリーデーでは、自家用車で通勤する人に向けて、駐車場が必要になります。駐車場は、バスや電車など公共交通やシェアサイクル(スクーター)、徒歩や自転車関連施設などとスムースに接続されている必要があります。それらが難しい場合には、特別なシャトルサービスを走行させることも価値があります。近隣住民は、前日に通りを確認する必要があります。
- 前日の道路の測定
普段や前日の、自動車の燃料消費量、排気ガス、健康への影響(子供も大人も)、騒音レベル、交通量、コストなどの数値が収集できれば、カーフリーデーの効果をより具体的に検証できます。
- カーフリーな未来を描こう
カーフリーデーは、自動車のない街路や地域とはどのようなものかを、市民に示す絶好の機会です。ここでは、解決策を実験したり、新しい施策を始めるよい機会となっています。そして、実際に、多くの都市が、すでにこの最後の一歩を踏み出しています!
参考事例(カーフリーデー発祥都市)
<ラロッシェル(フランス)2006年>
ラ・ロッシェルは、フランスの港湾都市で、1997年にはじめてカーフリーデーを実施しました。
2006年は、カーフリーデー10周年ということで、盛大にカーフリーデーが実施されました。まちの中心部(約1.2ha)をカーフリーとし、周縁部には、誘導・指示ゾーンを設け、P&R駐車場を設置し、中心部まで、無料のシャトルバスを出しました。また、ZONE30に新しく指定された道路のお披露目式や、町のバリアフリー化にむけた整備の調印式も行われ、市長が参加していました。
<ラ・ロッシェルについて>
ラ・ロッシェルは、大西洋岸に位置する都市圏人口135,000人のフランスの港湾都市で、古くから貿易の拠点、芸術・文化のまちとして栄えています。その一方で、環境の観点から、様々な都市交通政策を展開し、約20年前から電気自動車の普及にも熱心な環境都市のパイオニアとして広く知られています。
このラ・ロッシェルで、1997年9月9日、「車のない日」の社会実験が行われました。
この実験の成功がきっかけで、翌年にはフランスの環境省のイベントとして、さらに2000年からはEUのプロジェクトとして毎年9月22日に「街では車を使わない日」が実施されることになりました。2002年からは、モビリティウィークの中心的イベントとして、現在に至っています。
カーフリーデーの実施状況(世界)
カーフリーデーは、モビリティウィーク当初は、多くの都市で実施されていましたが、近年は、欧州での交通まちづくりが進んだこともあり、3割程度の実施となっています。ですが、EMW本部としても、依然、重要な取組みと位置付けています。
以下は、当団体代表が、カーフリーデー、モビリティウィーク初期の2000年前後に訪れたフランスの都市の様子です。貴重な映像ということで、EMW本部のYoutubeにアップされています。ご覧ください。
ラ・ロッシェル La Rochelle(仏)/1997
ストラスブール Strathbourg(仏)/1998
トラムで有名な、フランスのアルザス地方の都市ストラスブール。
トラムを筆頭とした公共交通政策だけでなく、総合的なまちづくりの領域でも成功を収めています。
カーフリーデー開始2年目から、ストラスブールも参加しました。
リヨン Lyon(仏)/2002
カーフリーデーの歴史
1997年のラ・ロッシェル(仏)がカーフリーデーの発祥!
カーフリーデーは、1997年に行われたフランス、ラ・ロッシェルの「車のない日」が発端となっています。フランスの国土整備・環境省(現在はエコロジー・サスティナブルデベロップメント省)は、この試みは大変意味深いことと考え、大臣の呼びかけに応じた都市において、1998年からはフランスの催しとして"En Ville, sans ma voiture " (街ではマイカーを使わない)という名称で行ってきました。
2000年からはEUの取組みに発展!
2000年からは、欧州委員会(環境総局)のプロジェクトとなり、カーフリーデーという名称が一般的に使われるようになりました。フランス語を基礎とした、"In town, without my car!"も使われています。
2002年から1週間の取組み「モビリティウィーク」へ発展!
このカーフリーデーをさらに発展させ、2002年からは、「モビリティウィーク」として、1週間の「都市と交通に関わる催し」となりました。1週間の内に環境や交通に関わるテーマについてキャンペーンを行い、今ではカーフリーデーはこのモビリティウィークの中心イベントとなっています。